本研究の目的は、守護を出自とする戦国大名豊後大友氏を研究対象に、戦国大名大友氏が室町幕府・朝廷から獲得した守護職などの幕府官職と位階・官途(官位)などの栄典に着目し、「権力」の面と「権威」の面からその獲得効果を検討することにより、戦国大名と室町幕府・朝廷との関係について明らかにすることである。 研究の最終年度である本年は、これまでの史料収集・調査・研究の成果をまとめる作業を行うとともに、東京大学史料編纂所において4日間の補充的な史料閲覧調査を行った。 これまでの3年間で収集した幕府・朝廷・公家・京都の寺社などの中央側の史料と、大友領国とその周辺大名領国などの大友氏側の史料を分析し、戦国期の大友氏当主ごとに中央政権から獲得した幕府官職と官位などの栄典の獲得交渉の時期・過程を検討し、4年間の研究成果をまとめた「戦国大名大友氏と室町幕府」を執筆した。本論文に朝廷が含まれていないのは、戦国期歴代大友氏当主は朝廷から官位を授与されているが、室町幕府を介さずに大友氏が直接朝廷から官位を獲得したことは確認できないからである。 結論としては、①戦国大名大友氏は幕府が補任する守護職の獲得には積極的であったが、官位などの栄典獲得にはあまり意欲を示していない。②守護職獲得の目的は、他者に利用させないことにあった。③戦国大名大友氏と室町幕府との交渉・交流は、守護出自という保守的・伝統的なイメージとは異なり、それほど多くはなく、他の遠国大名と同程度であった。 なお、同稿は申請者の著書(タイトル・刊行時期未定)の終章に収録予定である。
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