研究課題/領域番号 |
16K16917
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
牧野 雅司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (10754301)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日朝関係 / 明治維新 / 外交文書 / 対馬 / 外務省 / 朝鮮 |
研究実績の概要 |
本研究は、日朝両国が中・近世以来の日朝関係の構造の変化をどのように受けとめたのかを探るために、3つの論点を設定した。すなわち、①廃藩置県前後の書契(外交文書)・吹嘘(渡航証)の発給状況、②廃藩置県の通知を目指す日本側の使節の実態、③朝鮮側の渡航船管理の実態である。今年度は研究課題を達成するための準備作業として、史料の収集に重点を置き活動した。そして、①の論点についての分析を進めると同時に、研究計画の変更に伴って②③の分析も同時に進めることとした。実蹟の概要は以下の通りである。 ・今年度は、滋賀県立大学図書情報センター、国立国会図書館、長崎県立対馬歴史民俗資料館にて史料調査を行った。その結果、『朴珪壽全集』『通信使謄録』をはじめとする朝鮮側の日朝関係に関わるものや、対馬藩関係、特に近世の倭館や外交文書関係のものを中心に、多くの史料を収集することができた。ここで収集した史料については、順次翻刻作業を進めている。 ・研究計画の変更に伴い、明治期の史料、具体的には、岩倉使節団文書や三条家文書、外務省記録に含まれる日朝関係史料の収集を行った。これらの史料については順次翻刻を進めており、②③の作業を行う準備を進めることができた。 ・『東莱府啓録』に書かれている渡航船管理や外交文書・渡航証のやりとりに関わるデータ整理も先行して開始した。これまで不明であった1871年から1872年の渡航船管理の状況を分析する準備を大幅に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の核となるものの一つが、対馬藩による渡航船・渡航証の管理のシステムであり、全ての論点に関わってくるものである。本研究では、このシステムの解明を対馬藩の史料、特に長崎県立対馬歴史民俗資料館に所蔵されている史料から行う予定で、8月初旬に現地での史料調査を行い、関係する古文書の撮影を行った。 ただし、この調査で撮影ができた史料は、対馬藩の持つ関係史料の一部に過ぎず、時間の関係上、未撮影の史料を多く残すこととなった。そのため、その後3回にわたり調査を計画し、来年度以降も継続する予定であった。しかし、10月以降、急な校務により調査に行くことを断念せざるを得ない事態が生じ、予定していた対馬での史料調査を行うことができなかった。この点で、当初の予定を達成することが困難となり、研究計画の再検討が必要となった。 そのため、本年度は8月に撮影した史料と、国立国会図書館等で収集した史料の整理を中心に作業を進めることとした。この作業の中で、国立国会図書館所蔵の『分類紀字大綱』など、当初の見通しに入っていなかった史料を発見することができたことは大きな成果である。また、明治期の史料の分析を先行して始めたことで、廃藩置県前後の動きに見通しを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度から再来年度まで、史料調査を予定していた長崎県立対馬歴史民俗資料館が改修のため閉館するため、対馬にある史料については期間中にこれ以上調査を行うことはできず、研究の方向を変更せざるを得ない。その点を踏まえて、課題を可能な限り達成するため、今年度は次の作業を進める予定である。 ・前年度までに収集した史料から、近世の渡航船・渡航証管理の状況をできる範囲で解明を行う。そのために、当初の計画を前倒しして、近世期における朝鮮側の史料を含めた分析を進める。 ・引き続き史料の収集を進める。今年度は視点を変えて、維新政府側の史料の収集に注力する。具体的には、宇和島伊達家文書に、外国官知事など明治初年に外交の要職を勤めた伊達宗城の史料が残っている。この史料の調査を行い、日朝関係に関する史料の抽出を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は各費目で次年度使用額が生じた。物品費については、今年度は撮影機材の購入よりもむしろ勤務校に揃っていない基本文献の購入・収集に重点を置いたため、高額な出費があまりなかったことが理由である。旅費については、東京・対馬での史料調査を複数回予定していたが、校務のため断念せざるを得なかったことが理由である。その他については、国立国会図書館での史料の複写が、以前よりも少量ずつ申請して行わなければならず、調査期間中に多くは複写できなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は宇和島伊達家文書など、調査対象を若干変更するため、今年度よりも多くの旅費や印刷費の使用が見込まれる。また、引き続き文献の購入を行っていくため、物品費からの支出は今年度に引き続き行う予定である。
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