本研究は、日朝間を往復する渡航船管理の様子を復元し分析することで、廃藩置県前後の日朝関係の変化を捉えることを目的とした。研究の結果、次の点を明らかにした。まず、当該期の日朝関係は、廃藩置県を経ることで、見た目は従来通りの渡航船管理が行われているものの、書契・吹嘘の名義とその発給者である対馬島主が不在であるという齟齬が生じているという大きな矛盾を抱えることとなった点である。この日朝関係がはらむ矛盾を明らかにすることで、当該期の日朝関係の変化をより明解に示すことができるようになった。また、朝鮮側の具体的な渡航船対応の様子として、1872年に漂流した作兵衛親子とその対応の様子を復元した。
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