最終年度となる平成31年(令和元年)度は、関連史・資料や書籍類の収集などを継続し、研究環境の拡充・補完を行った。また、木簡出土情報の収集も引き続き行い、静岡市・尾羽廃寺跡出土木簡、三重県桑名市・柚井遺跡出土木簡、山口県美祢市・長登銅山跡出土木簡などの調査・研究を実施した。 また、本務である平城宮・京跡出土木簡の調査・研究、および関連研究テーマである年輪年代学的手法を応用した木簡研究も進め、それらを交互にリンクさせることにより、研究の深化を試みた。 上記に基づく研究成果について、様々な媒体・形態での発信に努めた。具体的には、論考1本(山本祥隆「古代木簡にみえる「勝」の字体」『奈良文化財研究所紀要2019』2019年6月)、学会誌掲載原稿2本(山本祥隆「奈良・平城京跡」『木簡研究』41号、2019年11月、他)、公刊図書2冊(奈良文化財研究所編『木簡 古代からの便り』岩波書店、2020年2月、他)、機関誌2冊(奈良文化財研究所編『平城宮発掘調査出土木簡概報』45、2020年3月、他)、学会報告1本(武田寛生・山本祥隆「静岡県尾羽廃寺跡の発掘調査と出土木簡」、第41回木簡学会研究集会、2019年12月8日、)、などといった成果を挙げることができた。 以上により、研究目的であった日本古代の地方社会の実態を一定程度解明し、古代史像を豊かにすることができた。また、都城遺跡出土木簡の調査成果も加味することにより、広く古代日本の国家や社会のあり方を考究する素材を提供できた。また、木簡研究の新たな方法を模索・探求することにより、地方官衙遺跡出土木簡の資料的価値を増大させつつ、さらにそれが研究手法を洗練させるという、好循環を生み出す可能性を見出すこともできたと考える。
|