研究課題
若手研究(B)
本研究の成果は、近世の日本社会に深く根ざした対外交流の影響を、九州の陶磁器産業を事例として明らかにしたことである。具体的には、江戸時代の肥前や天草における陶磁器産業に着目し、磁器生産において絵付けに不可欠な絵薬の供給を長崎貿易による中国からの輸入に依存し、特に18世紀以降は不安定な輸入状況に生産が強く影響されたことを明らかにした。さらに、陶磁器の全国各地への流通網の分析から、生産地にとどまらない国内社会への広範な影響の波及について考察した。
日本近世史
本研究の成果は、これまでの長崎をはじめ貿易「窓口」をフィールドとした近世貿易史の視点、あるいは鉱物・海産物など主力輸出入品の産業史研究に埋没し、見逃されてきた、地域産業と対外交流との関係に光を当てたものといえる。近世の肥前や天草の磁器産業を対象として、九州における対外交流活動が地域の産業に深く結びついたその実態を明らかにした。それによって「窓口」としてだけでなく、社会に深く対外交流の影響が浸透していた近世の西南日本の地域社会像について、新たな議論を提示できたと考える。