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2017 年度 実施状況報告書

清朝の漢地支配と雲南銅政の財政構造―生み落とされる「盛世」と「衰世」―

研究課題

研究課題/領域番号 16K16920
研究機関筑波大学

研究代表者

上田 裕之  筑波大学, 人文社会系, 助教 (70581586)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード清朝史 / 貨幣史 / 財政史 / 档案 / 雲南省 / 雲南銅 / 銅政 / 制銭
研究実績の概要

平成29年度も、昨年度に引き続き、18世紀後半の雲南省における銅の生産費用拡大、雲南省から銅廠(銅山)に先払いされた銅価の未回収(廠欠の発生)、銅の不正流通の横行という雲南銅政の変調を示す3つの現象の実態を解明すべく、『宮中档乾隆朝奏摺』『宮中档朱批奏摺財政類』『内閣漢文題本戸科貨幣類』『明清档案』『乾隆朝上諭档』などから関係史料の収集と分析を行った。
また、近年は中国側で関係する研究の発表が増加しており、その成果を批判的に踏まえながら自身の研究を進めるべく、李強『金融視角下的「康乾盛世」―以制銭体系為核心―』(黄山書社、2008)、王徳泰『清代前期銭幤制度形態研究』中国社会科学出版社、2013)、王宏斌『清代価値尺度―貨幤比價研究―』三聨書店、2015)の3件について集中的に検討を加えた。これらの研究にみられるように、中国側では档案史料を多用した研究が複数現れており、参照すべき成果を積み重ねてきているが、清朝政府の政策の内在的理解に関して言えばなお十分に取り組まれてはおらず、そのために貨幤史的展開を跡付ける上でいくつかの未解決の課題を残していることが見て取れた。
また、近年は、個別の経済史研究は相変わらず低調であるが、その反面、久保亨編『中国経済史入門』(東京大学出版会、2012)、岡本隆司編『中国経済史』(名古屋大学出版会、2013)、水島司・加藤博・久保亨・島田竜登編『アジア経済史研究入門』(名古屋大学出版会、2015)などといった意欲的な経済史関係の経済入門書が相次いで刊行され、本研究課題もまた巨視的な観点から問題を随時捉え直す必要を感じた。特に、清朝政府がその出自ゆえに柔軟な経済政策を採用したとのいささか一面的な説明に対して、私のこれまでの政策史的研究の成果をもとに問題提起していく必要があることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

関係史料が膨大であり、直接的な研究成果を論文の形で公表するには至らなかったため、やや遅れている。しかし関係史料の収集はほぼ完了しているので、平成30年度はその分析を集中的に行って複数件の論文を公表し、遅れを取り戻す。

今後の研究の推進方策

引き続き、『宮中档乾隆朝奏摺』『宮中档朱批奏摺財政類』『内閣漢文題本戸科貨幣類』『明清档案』『乾隆朝上諭档』などの档案史料から関係史料の収集と分析を行う。
また、本課題の遂行を当然重要視しつつも、申請時の問題意識にとどまることなく、清朝による東部ユーラシア統合という巨視的な観点から、漢地の北端に位置する首都北京を維持するための銀財政を陰で裏打ちするものとして漢地における銀銭併用の定着を再解釈するとともに、それを可能にした雲南銅政の歴史的意義について考えを深めていく。また、19世紀前半の銀貨高騰・銭価低落による社会不安醸成をめぐって、清朝が漢地市場の動向に対応しきれなかったことの原因を、漢地の市場秩序の内生的・自己組織的政策を所与の前提として組み立てられた清朝の経済政策に求め、そのなかで雲南銅政をあらためて検証する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] (書評)加藤直人著『清代文書資料の研究』2017

    • 著者名/発表者名
      上田裕之
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 960 ページ: 51-54

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公開日: 2018-12-17  

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