研究課題/領域番号 |
16K16921
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 尚史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (20589626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 家族 / イラン / 婚姻 / 離婚 / 家産 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、まず4月にナポリ東洋大学(イタリア)における国際ワークショップ "Actors, Contents and Practices of Transmission"にて、“Tabrizi Notable Family and Family Property”と題する家族による家産保全戦略にかかわる報告を行い、独仏を中心とする中東家族史研究プロジェクトDYNTRANとの意見交換と今後の研究協力の可能性を確認した。このほか、7月には、19世紀イランの婚姻と離婚に関する研究報告(招待)を早稲田大学地域・地域間研究機構と京都外国語大学の近代中央ユーラシア比較法制度史研究会にて行い、これまでスンナ派とあまり変わらないとされていたシーア派の婚姻・離婚における特徴を明らかにした。 9月には、連携研究者となっている「イスラーム・ジェンダー学のための基礎的総合的研究」(基盤A、研究代表者:長澤栄治)の「イスラーム・中東における家族・親族の再考」第四回研究会に登壇し、「家産の維持と家族関係」と題する報告を行った。長澤科研と本科研の研究関心は重なりが多く、大型科研の場を利用して研究成果の発信に努めている。また10月には同科研の北九州市における公開セミナー「イスラーム世界の結婚最前線」に討論者として登壇した。 実際の研究成果としては、西アジア家族史研究とイスラーム聖者廟研究を接合する試みとして、“Mausoleums in Safavid Family History”と題する論考をDYNTRAN working Paperに寄稿した(ウェブ上)。また渡部良子氏との共著で、家族史研究上不可欠な簿記術にかんする史料研究「16世紀サファヴィー朝期のペルシア語財務・簿記術指南書」(『アジア・アフリカ言語文化研究』94号)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧州の中東家族史研究プロジェクトであるDyntranとの交流により、working paperへの寄稿を打診され、それを実現したことで、今後の研究協力の可能性に弾みがついたといえる。また、19世紀イランにおける婚姻と離婚に関する研究も徐々に成果に結びつきあり、できるだけ早く公刊したいと考えている。このほか、ナポリ東洋大におけるワークショップでの成果を踏まえて、30年度は家産と家族の関係について一層の成果公刊を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度および31年度は研究全体の後半にあたる。これ以降は成果刊行を意識していきたい。具体的には、1.家産にかんする研究をまとめる方向で調整する。2.婚姻・離婚にかんする研究を一層進展させて、活字として刊行することを目指す(平成31年度前半を予定)。 また、平成31年度9月にベルリンで予定されている国際学会に応募する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画で予定していた平成29年の学会出張を別経費で行い、その分の予算を平成31年にドイツで予定されている学会への費用に充てるため。
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