研究実績の概要 |
2019年度は、科研最終年度ということで、成果の公開を精力的に行った。まず9月の第9回ヨーロッパ・イラン学国際会議に参加し、"Urban Household Structure in 19th Century Iran: The Case of Tabriz"と題する、19世紀イラン第二の都市であるタブリーズの都市空間と家族構成に関する研究報告を行った。また、12月には九州史学会(於九州大学文学部)に参加し、「財産目録・帳簿史料に見る家産の維持・存続――19世紀後半におけるイラン有力者家族の実践」と題する報告を行い、家産の維持における女性の役割を、イスラーム法文書、書翰、帳簿類を通して明らかにした。 また本科研の4年間の研究の成果として、『イスラーム法と家産――19世紀イラン在地社会における家・相続・女性』(中央公論新社、2020年2月)と題する単著を刊行した。本書は、イランの在地有力者の家産の存続における女性の役割を解明した研究成果であり、本科研の成果の集大成と位置付けている。 このほか、“Creating a Family Property in Early Modern Iran: Socioeconomic Activities of Najafquli Khan Dunbuli of Tabriz in the Eighteenth Century”と題する研究論文を英語で執筆し、ヨーロッパ(主として独仏)の大規模な中東家族史研究プロジェクトであるDYNTRANの研究論文集Families, Authority and Transmission of Knowledge in the Early Modern Middle East (tentative)に2019年5月に寄稿していたが、編集の都合上、残念ながら2019年度内には刊行されなかった。
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