平成30年度には、日本西洋史学会において小シンポジウム・近代イギリスにおける科学の制度化と公共圏に参加し、イギリス海軍における科学研究体制の制度化に関する口頭報告を行った。海軍傘下の組織の中でも特にグリニッジ天文台に焦点を当て、その社会的に有用な研究活動への傾斜について詳しく検討した。現在、共著論集に寄稿する論文を作成中である。 海軍による時間と空間の把握のための科学技術研究については、ワルシャワで開催された17th International Conference of Historical Geographersで報告を行い、歴史地理学者から多数の有益な指摘を頂くことができた。海軍による世界的な水路測量と海図作成の実践については次年度以降も英国立公文書館での史料調査も含めてさらに前進させる予定である。 精密な時間計測の実践と航海術・帝国との関係に関しては、とくにイギリス帝国の植民地に設置された天文観測所の機能を中心に検討を進めることができた。グリニッジ天文台アーカイブズ(ケンブリッジ大学図書館所蔵)の分析を通して、各植民地の天文台が時間の計測とその社会への正確な伝播のために行っていた諸活動を明らかにした。その成果の一部は、ソウルで開催された時間意識に関するシンポジウムや学内の共同研究会において発表し、それぞれの参加者から有益なフィードバックを得ることができた。その成果の一端を、「時計時間の移植と管理ーイギリス帝国の植民地天文台と時報技術」(竹内真人編著『ブリティッシュ・ワールドー帝国紐帯の諸相』)として発表している。
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