研究課題/領域番号 |
16K16938
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 建治 北海道大学, 文学研究科, 共同研究員 (00580929)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 考古学 / 千島アイヌ / 露米会社 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本研究課題で扱う「19世紀前半」以前の千島アイヌの歴史に関する研究を推進し、露米会社の千島経営に至るまでの歴史的経緯を検討した。 (1)1778年作成の千島列島におけるアイヌの人別帳の調査 2017年6月にロシア・モスクワのロシア国立古文書館所蔵資料を調査した。資料番号Ф.7 оп.2 д.2539「千島列島、チュクチや主にカムチャッカ等の住民について(1779-1785)」に収められているシャバーリン関連資料を調査研究した。その中でも特に注目されたのは、「新たにヤサーク税を聴取したクリル列島の住民数とその集めたヤサーク税に関する一覧表」であった。これまでロシア側の書籍・論文等で、18世紀後半の南千島のアイヌも含む千島アイヌの毛皮税(ヤサーク税)の徴収(あるいはロシア帝国の臣民化)に関する史実が一部言及されてきたが、ロシア研究者以外、その根拠となる一次資料は確認されてこなかった経緯がある。今回の調査によりその全貌が明らかとなり、今後、詳細な研究を行うことで、当時のロシア側のアイヌに対する具体的な対応やその意図が理解できると考えている。千島アイヌのロシア化を考察する上で最も重要な毛皮税の徴収を精査することで、19世紀前半の露米会社の千島経営へと続く千島アイヌの歴史に新しい視点を導入できると期待される。 (2)アイヌ文化の北方地域への拡散時期の研究 いわゆる「アイヌ文化の成立」の問題に関連し、サハリン島や千島列島の北方地域へのアイヌ文化の拡散時期が議論されている。北方地域の拡散の年代的問題を扱う上で、「内耳土器」の検討は必須である。本年度の研究では、東京国立博物館所蔵のサハリン島出土の内耳土器2点を年代測定した。その結果、①13世紀代と②13世紀末~14世紀末であった。サハリン島の年代値は、千島列島へのアイヌ文化進出を推定するための重要な示準となることが想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に計画していた「千島列島出土のロシア製品の型式分類と編年作業」を十分に実行することができなかった。本年度のロシアでの研究調査は、文献史料調査をメインで行ったため、考古資料調査に時間を割くことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、国内の博物館等で所蔵されている千島列島出土のロシア製品の資料調査を積極的に実施していく。また、日本国内では入手困難な論文・書籍等に関しては、ロシア研究者を通じて収集し、型式分類と編年作業に役立てていく。文献史料調査については、平成29年度に引き続き、ロシア国内、特にモスクワにて継続調査してく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画していた海外調査(考古資料調査)を実施することができなかったため。 (使用計画)平成29年度に実施することができなかった国内外の資料調査(主に考古資料調査)等を実施していく。
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