研究課題
若手研究(B)
本研究では、19世紀前半に現れた千島アイヌの物質文化のロシア化は、それ以前の18世紀後半から本格化したロシア帝国の千島列島への進出が大きく影響している可能性が想定された。特に、ロシア連邦モスクワ市のロシア国立古文書資料館所蔵の1775-1780年「クリル列島」遠征関連資料の分析により、毛皮税徴収による千島アイヌのロシア帝国の臣民化が19世紀前半にみられる物質文化のロシア化へつながっていく可能性が考えられた。
北方史
本研究の学術的意義は、18世紀後半から19世紀前半にかけて千島アイヌがロシア帝国に取り込まれていく過程において、千島アイヌがどのように自身が持つ文化的背景を変化させていったのかに注目でき、従来の日露関係史から脱却した新しい千島アイヌ史の構築に近づけた点にある。社会的意義としては、アイヌ研究においてロシア側の一次資料や研究成果を積極的に利用した研究が少ないため、本研究はその数少ないモデルケールとなり、アイヌ文化の多様性を理解する上での新たな研究視点を提供するものとなった。