本研究は、考古学研究上の基礎資料でありながらも、これまで統合的な整理が不十分であった古墳時代(西暦3世紀半ば~7世紀)の土器について、時期、地域、器質を横断して時代的な特質を解明することを目的とする。そのために3つの研究の柱を相互に関連付けて研究を進めた。すなわち、【テーマ1】日本列島における儀礼用土器の広域共有現象を通時期的に把握するとともに比較考古学的観点からその背景を考察すること、【テーマ2】土器編年上の刷新的な画期の背景を、同時期の韓半島と比較することで外的影響といった視点から再検討すること、【テーマ 3】土器様式を刷新する中心地のあり方と周辺地の様相を比較することである。最終年度である2019年度は、研究の総括、比較考古学的検討を中心に研究を総括し、公表した。研究実績を具体的に述べると、以下の通り。 研究テーマ1に関しては、研究期間内の集成作業を元に、国家形成期における飲食儀礼=「饗宴」の役割を重視し、儀礼用土器が網の目状に広域共有される背景として捉えた。さらに十分になされていなかった土師器壺と須恵器甕の通時期的容量分析を進め、貯蔵量が古墳時代を通じて増大していく傾向を成果報告した。国際発信としては、米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校でワークショップを開催し、現地研究者と土器実測・分析法を含め議論した。 研究テーマ2については、日本出土百済関係資料の集成成果の一部を公表し、須恵器生産に関わる成果を古代学研究会にて発表した。また考古地磁気年代測定法、光ルミネッセンス年代測定法の測定結果をもとに古墳時代土器編年の暦年代化に関する研究も進め、前者による成果は学会発表に名を連ねた。 研究テーマ3に関しては、大阪府桜井谷2-2号窯出土須恵器杯身・杯蓋の色調計測成果を中心に論文で公表した。 本研究の成果として、古墳時代土器の概説ホームページの制作も進め、完成した。
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