研究実績の概要 |
本研究の目的は、法量から縄文土器の機能を明らかにすることである。縄文時代中期後葉(約5,000~4,500年前)の関東地方で出土する深鉢形土器を対象に、①遺跡立地、②出土状況、③土器型式、という三つの視点から土器法量を捉えなおし、土器の大きさや形状が、実用だけでなく社会的機能を反映することに言及する。 令和元年度の研究は、これまで集成した資料の精査、および補完的な資料集成を行い、縄文時代における土器法量の意義について考察した。 研究内容として、まず関東地方北部・甲信越地方の約300個体の資料を補完集成した。次にこれらの土器情報をこれまで分析を実施した関東地方南部等のデータと統合し、中日本における土器法量の傾向を分析した。その結果、縄文時代中期後葉においては、①いずれの地域においても20リットル前後の容量の深鉢形土器が数量的に主体となる、②いずれの地域においても量的に限定されるものの40~100リットルの大型土器が一定数存在することが明らかとなった。 上記の分析結果について、法量以外の属性との関係性を検討したところ、第1に遺跡が立地する生態学的な環境との間に明確な相関性を指摘することはできなかった。この点は縄文時代中期後葉において土器の利用形態が広域に共通していたことを示唆する。第2に土器の法量と型式・類型との比較では、これまでの研究実績でも示している通り、特定サイズが志向されるものと複数サイズにわたるものの二種を区別し得ることが判明した。この現象は、例えば関東地方の連弧文土器、また甲信地方のX把手付深鉢等に顕著にみられるように、関東地方西部~甲信地方に比較的よく確認できる。ここから、土器の型式や類型が示す社会的機能の一端をサイズから読み解くことが可能となった。
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