本研究では、北メソポタミア青銅器時代過渡期(紀元前2300~前1600年頃)における物質文化の様相と技術・文化関係の解明を試みた。出土土器群を技術論的に検証した結果、過渡期を挟む前後の時代の土器群には顕著な断絶がみられず、型式・様式的に連続的な展開を示すことを明らかにした。同時に土器文化からみた地域間交流に変化が生じていたことも判明した。以上の成果は、古代都市文化の衰退と社会変容は従来提唱されていたような劇的な断絶ではなく、物質文化上は緩やかな連続的変化を見せつつも、地域間関係に質的な転換をみせていたことを示す。また、その転換の実年代に地域差がある点は、古代メソポタミア社会の動態を物語る。
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