本研究は、近年構造転換期にある中国を対象として、経済構造の再編に伴う労働力移動のメカニズムと空間構造を解明することを目的とする。本研究は上記の目的を達成するため、主に労働力移動の地域的差異とその要因、都市労働市場の構造および労働者の移動性に関する体系的解明を試みる。 これまでの主な研究成果は下記の3つである。①中国東部沿海地域の農村地域における労働力流出の地域的特性とその要因を分析した。②農村労働力の移動チャネルによる都市労働市場の分断構造を考察した。③労働集約型産業の空間的拡大および農村地域における再生産構造の展開が労働力の移動に与える影響を解明した。 2019年度の主な研究成果は下記の4つである。①これまで収集してきた中国郷鎮レベルの人口センサスデータを用いて小地域レベルにおける人口変動の空間的特性とその要因を分析した。現在は人口変動の空間的特性に関する作業を終了し、要因の分析に着手している。この作業を終えると、論文を執筆と投稿する予定である。②補足的な調査は広東省広州市郊外地域の企業に就業している出稼ぎ労働者を中心に行なった。この作業は都市労働市場の構造と労働者の移動性との関係を明確にすることができた。③これまで得られた分析結果をInternation Conference on Spatial Planing and Sustainable DevelopmentおよびJapan-Korea-China Joint Conference on Geographyの国際学会、2019年度中国地理学大会において計3回発表し、国内外の学会に向けて研究成果を公表した。④上記の学会発表で十分な議論を行われた論文をまとめている。その1つは国際学術誌「Land Use Policy」に投稿済である。いま1つの論文は執筆中であり、日本地理学会の英文叢書に投稿する予定である。
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