研究課題/領域番号 |
16K16958
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
深瀬 浩三 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50631884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農業(食料)地理学 / 農産物産地 / ブランド化戦略 / フードシステム / バリューチェーン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバル化の進展によって日本の農や食を取り巻く環境がダイナミックに変化している中で、食の安全・安心の確保を図るためにブランド化戦略を推進している日本各地の農産物産地を事例に、地域ブランド農産物・食品(地域特産品)の形成主体によるバリューチェーン(価値創造の供給連鎖)の構築を明らかにすることである。 初年度である平成28年度は、近年の日本と諸外国における国内外の農業(食料)地理学や隣接分野の農業経済学などから農産物・食品のブランド化などに関する先行研究のレビューを行った。また、農産物・食品のバリューチェーン構築は、第1次・第2次・第3次産業が連結(第6次産業化)していることから、工業地理学や文化産業研究、地域政策研究なども着目した。 それと併せて、統計データを利用して1970年代以降の県・市町村レベルの各野菜の生産・流通の地域的変化を明らかにした。根菜類各品目の生産地別作付面積の変化をみると、すでにいくつかの品目の生産は偏在しているが、1970年代~1980年代にかけては、野菜作の補助事業の実施、米の生産調整による転作などによって、北海道や青森県、九州地方の南北の遠隔地に産地移動した。1990年代以降、根菜類各品目の作付面積が全体的にさらに減少の傾向を示す中で、千葉県の冬ニンジンや青森県のゴボウ、長崎県のタマネギ、北海道のナガイモ、鹿児島県の秋植えバレイショの作付面積が増加している。次に、北海道、東京、名古屋、大阪、北九州の中央卸売市場における根菜類各品目の流通をみると、1980年代までローカルスケールで出荷を担っていた中小規模生産地は、大規模生産地の成長や輸入野菜による広域大量流通によって、卸売市場でのシェアを落としている。 また、近年、地域団体商標登録や日本農業賞を受賞した農産物産地のブランド化戦略などに関する基礎資料の入手とデータベースの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、熊本地震の発生によって交通条件が一時制限されたり、災害・防災関連の業務が多く発生した。また、勤務校における学部改組等に伴い、授業体制の整備などの作業も多く発生した。このため、当初計画していた現地でのフィールド調査のための時間を減らさざるをえなかった。ただし、年度半ばから九州地方の各研究対象地域における調査協力者の確保や本格的な調査に向けた事前調査は済ませており、平成29年度以降はこの遅れを取り戻すことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の平成29年度は、初年度に収集したデータベースをもとに農産物産地のブランド化戦略の類型化とその特徴の比較分析・類型化を図る。そして、予定している複数の研究対象地域のフィールド調査を進め、その成果を公表するため、学会での研究発表や学術論文の執筆を進める。
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