本研究ではドイツを対象に、日系企業集積のプレゼンスの斜陽化を抑える領域的制度の変革の方向性を研究した。2年目で最終年度にあたる平成29年度は、平成28年度に実施した現地調査と理論フレームに日独関連機関への新たな調査結果も補完的に加味しながら、研究成果の執筆と発表に重点を置いた。 一つは、進出先であるホスト社会とのしなやかな関係構築と当該ホスト社会での他国企業の動きに適応する「グローカル・コミュニティ」の生成と「レジリエンス」の視点が有効性を発揮することを明らかにした研究である。特に研究結果として興味深かった発見は、当初の研究計画で想定していたよりも、日系企業およびその集積にホスト社会や他国企業の動きへの適応力が、少なくともドイツにおいて備わっていることが理解された点にある。他方で、ドイツでの日系企業集積の優位性が揺らぎにあっていることも示唆されている。当該研究は、紀要論文と日本地理学会2018年春季大会で発表した。 もう一つは、プレゼンスに対峙しグローカル・コミュニティを進化させていくためにも、ドイツにおける日本の「再領域化」の克服を一層、クリアにしていく必要性が明らかになったことである。その一例が、グローバル中間層としての日本人女性の働き方の問題であった。これは、ホスト社会における日本の領域的制度の変革が、経済的文脈だけでなく文化やジェンダーなど多様な文脈と複合的に議論される性質を帯びていることが理解されるものであった。当該研究は、『兵庫地理』での論文として発表した。
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