新型コロナウィルス感染症の流行が長期化するなか、聞き書きや参与観察を中心とした中長期のフィールドワークを本格的に実施することは困難であると考え、これまでに写真やコピーを入手した資料の分析や文献調査に中心をおく形で研究を実施した。研究内容は以下の通りである。 (1)「柳川(柳河)新報」のアジア・太平洋戦争終了後、主に一時休刊後の時期の記事を中心に分析した。この時期の「柳川新報」は、刊行頻度が下がったこともあり、休刊前と比較すると、日常生活に視点をあてたような記事の内容は少なくなっている。とはいえ、狭い商店街という範囲の細かな事実関係について把握するのに適したメディアであることに相違はなく、商店街が母体となって実施したイベントや開発事業などについても把握できた。 (2)電話やSNSを用いた限定的な形であるが、「終焉期」商店街の状況について聞き取り調査を実施した。初期のミッションを終えた商店街は、自営をすでにやめた人びとの住まいとして活用されている面があることが具体的な姿で明らかになり、また、現当主の代で店じまいをすることを決めている店においても、そこに悲壮感はなく、然るべき選択として理解されていることもわかった。「シャッター商店街」を一元的にネガティブなものとみなす視点ではこぼれ落ちてしまうものを記述する必要がある。 併せて、新型コロナウィルス感染症が地方都市商店街に与える影響についても部分的に知ることができた。これについては、2022年度から開始する新プロジェクトの中で考えていくことができるだろう。
|