平成30年度は米国のセントルイス市(ミズーリ州)を中心に4週間あまりの現地調査を行った。昨年度に引き続き、十数年来の協力関係がある複数のキリスト教会およびそのメンバーを主な調査対象とし、当初の計画に掲げていた回心の語りや礼拝中の発話データを着実に収集することができた。また、牧師の代替わり等にともなう急激なメンバー数の減少を確認した昨年度の調査からわずか1年ほどのあいだに立ち直りつつある側面も垣間見ることができた。今後数年の変化を見なければ確かなことを言うことはできないとはいえ、民衆的キリスト教会の動態を知るうえでは貴重なデータである。 米国滞在中には、バーミングハム市(アラバマ州)にある別の黒人バプテスト派教会(およびその主要なメンバーが属する一族)を、数日のあいだではあるが訪れることができた。この教会(および一族)とも十数年来の関係があるのだが、これまで集中的な調査を実施してはいない。今回、改めてコネクションを確認したことで、都市的なペンテコステ派教会と郊外の伝統的なバプテスト派教会という、興味深い比較研究の可能性が見えてきた。 成果発表の面では、「宗教と社会」学会において黒人ペンテコステ派教会で実践されている悪魔祓いに関する報告を行い、現在準備中の論文執筆のために有益なフィードバックが得られた。
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