最終年度となる2018年度は、当初の研究計画に沿って、特に技術と生にかかわる人類学的概念の検討に焦点をあて、これまでの調査内容を踏まえて研究を進めた。関連する成果として、国際会議での発表2件、国内会議での発表3件、共著書の出版1冊を行ったほか、2019年4月に共著書を2冊刊行した。 また、2018年12月には、国内学会において市民対話型のワークショップを実施することができ、本研究でとりくんできた研究手法や研究テーマをより大きなコンテクストのなかで再考する機会となった。このことで、次年度以降の課題が明らかになったほか、新たな研究プロジェクトの構想を得ることができた。このワークショップの内容については、現在共著での論文を投稿中である(2019年度中に刊行予定)。 本研究は、医療環境を技術や制度との関わりのなかで記述することからはじめ、療養型病院での調査や過疎地での調査を実施し、それらの比較なかから新たな技術環境論を立ち上げていくことを試みた。研究計画は概ね予定どおりに進めることができたが、期待を上回る成果として、生命倫理学、行動経済学、科学技術社会論といった関連分野との共同研究を実施することができ、新たなアイデアやアプローチにつながった点が挙げられる。期間全体の活動をとおして、人間の身体が技術や制度を介して世界と関わりを作り出していくプロセスそのものを身体変容や環世界論の観点から人類学的な研究テーマにするという、より大きな研究テーマへの展開を具体化させることができ、さらなる共同研究の足がかりを作ることができた。新たなテーマについては、次年度以降に実施が決まっている共同研究においてさらに深めていくことになる。
|