研究課題/領域番号 |
16K16967
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
宮脇 千絵 南山大学, 人類学研究所, 研究員 (30637666)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モン / 民族衣装 / 流通 / 消費 / 中国 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国雲南省に居住するモンの「民族衣装」の、小規模だが国境を越えた流通と消費を描くことで、グローバルな市場経済の論理だけに依らない文化人類学的視点からの消費文化の動態を明らかにするものである。 初年度である28年度は、国内における文献収集と研究会参加、中国における現地調査を実施した。 中国における現地調査では、雲南省および貴州省のモン居住地域において、主に以下の項目について調査をおこなった。①貴州省六盤水市、黔西南プイ族ミャオ族自治州におけるモンの「民族衣装」の流通状況に関して、6か所の定期市、2か所のモン居住村、2か所の「民族衣装」販売店舗にて、聞き取り調査および参与観察。②貴州省貴陽市の貴陽民族博物館において、「民族衣装」や民族文化の展示状況や手法。③雲南省文山チワン族ミャオ族自治州において、モン居住村および市場での「民族衣装」の販売や消費に関する聞き取り調査。④雲南省昆明市の卸市場におけるモン「民族衣装」の販売状況。 その結果、以下のことが明らかになった。①雲南省文山州から貴州省へのモンの「民族衣装」の流通に関しては、特定の仲介者の存在があるわけでも流通経路が確立しているわけではなく、個々の商人がその時々の「売れ筋」を見極めて仕入れ、販売をおこなっている。そのため、何を売るのか、何が売れるのかは、卸市場にどのような商品があるのかに左右される。②雲南省文山州で製作されるモンの「民族衣装」が、昆明の卸市場を経て、貴州省に流通すると、モンというエスニシティは後景化し、「民族風」の衣装として消費される場合もある。③貴州省におけるモンの「民族衣装」の流通範囲は、そこがモンの居住地域か否かによって異なる。つまりモン居住地域においては、既製の「民族衣装」の流通を確認することができ、またモンがいない地域ではその流通を確認することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、文献収集と現地調査を実施した。 当初、現地調査に関しては、文山州からラオスへの「民族衣装」の流通と消費に関する項目も挙げていたが、初年度には実施できなかった。それはこの1,2年で、東南アジア向けよりも貴州省向けの流通が増加していることが分かり、調査地域を中国国内に絞ったためである。 ただし現地調査での成果は予定通りであり、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる29年度は、引き続き貴州省での調査を実施するとともに、中国雲南省のベトナム国境地域でのモン「民族衣装」生産に関する新たな動向の調査をおこない、「民族衣装」生産を介した雲南省とベトナムの国境を越えた女性の移動やつながりも射程にいれる計画である。同時に、調査で収集した資料の分析も進め、その成果としての論文執筆と国内外での学会において研究報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に入れていなかった謝金(論文翻訳)を支出したため、年度半ばで旅費が足りなくなった。そのため前倒し支払請求をおこなったが、結果として前倒し支払請求額すべてを旅費で使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には夏と春の2度、現地調査をおこなう計画であり、旅費として使用する予定である。
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