本研究は、中国雲南省に居住するモンの「民族衣装」の、小規模だが国境を越えた流通と消費を描くことで、グローバルな市場経済の論理だけに依らない文化人類学的視点からの消費文化の動態を明らかにするものである。最終年度となる30年度は、国内外における文献収集、国外現地調査、学会での研究発表および論文の執筆を実施した。 当該年度は、「民族衣装」販売や、「民族衣装」の展示活動に携わっている人々へのインタビューに重点に置き、彼/彼女らが「民族衣装」をどのように捉えているのかを明らかにしようと試みた。そのために、国外現地調査は、主に以下の項目について調査をおこなった。①雲南省文山チワン族ミャオ族自治州において、モン居住村および市場での「民族衣装」の販売や消費に関する聞き取り調査、②雲南省文山チワン族ミャオ族自治州において、モン文化の展示、普及、教育活動の展開についての調査、③貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州において、ミャオ族観光と民族文化の表象に関する調査。当該年度は、前年度よりもより多くのインフォーマントを得ることができ、モンの「民族衣装」販売の形態や、販売される商品の多様な広がりを確認することができた。また博物館や観光地における聞き取り調査により、現在市場で販売されている「民族衣装」と、民族表象として使用される「民族衣装」との違いから、市場に出回る「民族衣装」の特徴を明らかにすることができた。 この成果は、国内学会発表および日本語の論文として発表した。また英語論文の執筆も進めている。
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