研究実績の概要 |
本研究は、現代インドにおける遺伝子というサブスタンスとそれにまつわる諸実践が、いかに個と集団の差異化や同定に関わるのかを、歴史的かつ社会的側面からアプローチするものである。 最終年度にあたる今年度は、これまでのフィールド調査で得られたデータと文献資料から得た知見の統合を目指した。特に、遺伝子から見えてくるものを関心の核に置きつつ、1)親子・親族関係の複数化と自然化をもたらす第三者が関与する生殖医療(third party reproduction)の実践、および2)インドにおける配偶子の選択に働く要因とその社会的背景、について検討を行った。特に2)については、これまでの調査において、宗教(ヒンドゥーとムスリム)の差異が重要となることがわかってきたため、これまでの先行研究で強調されてきたカーストと人種という軸との比較として、宗教と人種という軸をたて、20世紀初頭から現代にいたるインドにおける人種概念に関する研究について検討を行った。 あわせて、7~8月にかけてインドの補足調査を実施し、生殖医療技術の利用患者のなかでも、これまでアクセスが難しかった、ドナー配偶子/胚を利用して子どもを持った人びとへの聞き取り調査も行うことが出来た。また、都市だけでなく農村部における生命や胎児形成に関するローカルな知識(民俗生殖論)の収集を行った。 また、スペイン・グラナダ大学で開催された第11回AFIN International Conference、南アジア学会分科会、龍谷大学で開催された国際シンポジウム「Life and Death in Contemporary South Asia」、ハワイ大学主催の9th Annual Arts, Humanities, Social Sciences and Education Conference等の国際学会にて研究報告を行い、成果公開に努めた。
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