本研究は、現代インド社会において遺伝子というサブスタンスとそれにまつわる諸実践が、いかに個と集団の関係性に変容をもたらしているのかを検討することで、科学的知識と実践が社会のなかで「共生成(co -production)」される動態の一端を明らかにした。具体的には、第三者が関与する生殖補助医療に関する調査から、配偶子や胚の提供と供与にまつわる言説と実践について分析し、そこからインドにおける社会集団の差異―特に近年の新たな動向として、カーストではなく宗教的差異(ヒンドゥーとムスリム)―が「本質化」される傾向にあるという新しい動きを明らかにした。
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