研究課題/領域番号 |
16K16972
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯田 高 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (70345247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会規範 / 法 / 系統学 / 法社会学 / ルール / 基礎法学 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、法や社会規範などの社会的ルール(特に共同体における協力規範・取引ルール・組織ルール)がどのような系譜を辿って形作られてきたかを、系統学の方法を用いながら明らかにすることにある。過去および現在の社会的ルールを広く収集したうえで類縁関係と系統分化の過程を推定し、社会的ルールの普及または消滅の軌跡を示す。最終的には、ルールの発達や変容の過程を経験的に探究するための土台となりうる理論を構築することを目指す。 研究の2年目にあたる2017年度は、(1)各地の無尽講・頼母子講の調査を継続するとともに、(2)そこで得られたルールのデータを整理し、(3)企業や組織を取り巻くルールの伝播・変遷に関する調査の準備を開始した。具体的には下記の通りである。 (1)東北・近畿・中国・九州の各地域で無尽講・頼母子講に関係する資料の収集および調査を実施し、実際に古文書も複数件入手して読解を進めた。あわせて、各地の図書館や史料館で調査を行っている。 (2)本研究1年目にルールの変化の原因となりうる要素の候補を特定していたので、それに基づいて(1)で得られた無尽講・頼母子講のデータを逐次整理し、データベース化しているところである。これをもとに、2018年度に系統樹の推定を行う予定となっている。 (3)予備的研究として、組織が従っているルールの伝播過程(大学の倫理憲章、組織における制定法の解釈など)の調査を進めている。さらに、企業が規制法を解釈する際にどのような内部ルールを用いているかに関する調査の準備にも着手した。 本年度の研究活動によって得られた情報は、ルールの発生・伝播・変容に関する基礎資料となるものである。特に、経済状況や市場が変動する中で人々がどのようなルールを採り入れ、そしていかにしてルールを変えてきたか、という問題を解明するために活用していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに進行している。相互救済を目的とする制度や慣習についてさらに調査を継続したいと考えている。 現在のところ、計画の遂行に支障をきたしうる問題は存在しない。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、(1)無尽講・頼母子講の分析を論文としてまとめ、(2)取引ルールおよび企業の組織ルールに関する調査を実施する。特定の業界を選定したうえで取引ルールの内容を示す資料・史料を収集し、それと並行して、企業の組織ルールについての資料やデータも集めて分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織ルールの伝播過程に関する大規模なインターネット調査を実施するため(2018年度夏ごろ実施予定)、2017年度の海外出張費として確保していた分を充てることとした。
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