H30年度(最終年度)は、過去2年にわたって行ってきた研究活動の成果を内外で公表することに活動の重点を置いた。 関連する分野の研究者を含め、図書館・文書館等に『ハレ参審人文書 校訂』を紹介し、すでに多くのヨーロッパの図書館において所蔵されるに至っている。すでに同書については、ドイツ語圏の専門誌においても好意的な書評を得た。また歴史的に用いられてきたドイツ語の法律用語を蒐集する『ドイツ法律用語辞典』にも出典史料として採用されたことは、本校訂への一定の評価であるともいえよう。 国内では、7月に法制史学会の個別報告において報告を行った。その際、本研究計画において主な対象史料とした『ハレ参審人文書』を題材として中世都市法の手稿史料を用いた研究でどのような新しい視点を提供しうるのか若干の例を挙げつつ論じた。 本研究計画は「ザクセン=マクデブルク法研究」という大きな枠の中に位置するものであるが、その研究分野の旗艦的プロジェクトにおいてコメンテーターとして招聘を受け、ヨーロッパ域外からみた視点でのマクデブルク法研究についてコメントを述べた。 また、過去二ヶ年の活動の継続として、本年度もヨーロッパの文書館において一次史料の調査に当たった。この部分に関しては、なお十分な検討を加えるに至っておらず、これは今後の課題となる。 三ヶ年にわたる研究期間全体を通じて、おおむね目的を達成できたのではないかと考えている。もちろん、中・東欧の諸都市の「参審人文書」やその類似史料との比較による法運用の実態解明にまで至らなかったのではあるが、この点についてはその対象を的確にとらえるためにももう少し中・近世ポーランド法について全体像を得る必要性があることが分かった。この点に気が付いたことで、今後のさらなる研究への方向性を定めることができた。
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