研究実績の概要 |
古代ローマ法における相続法制、特に遺贈の実務を検討する課題を進めた。特に、古代ローマにおける遺贈文化について、経済史の視点を借用した論考を完成させた。 こうした着想を得るべく、国際学会や国内の学会・研究会に出席した。その際、討議には積極的に参加し、論点整理に努めた。その上で、上記の古代遺贈文化、特にエリート層による奴隷解放とその相続人指定に関連する係争物評価にまつわる特殊な法実務に関して、書籍掲載予定論文を脱稿した。 ローマ相続法に新たな光を当てるU. Babusiaux, Wege zur Rechtsgeschichte: roemisches Erbrecht (2015)については精読を9割程度まで終えた。本研究の最終年度に当たる次年度には、通読を終える見込みである。その著者が編集した英語論文集に寄稿した論文において、遺贈に関する問題を扱った。古代ローマでは被相続人が遺言で指定した相続人に、遺贈義務が課された。これに対し、相似形をなす現代日本の最高裁判例を分析し、相続人と受遺者を同視する混乱を指摘した。 また、3月に南山大学で開催されたローマ法に関する講演会では、招へいされたフランス人研究者の講演原稿について、共訳の形で邦訳を担当し、事前に発表内容を配布した。在地の伝統的都市制度とこれに基づく裁判制度が、主都(首都)ローマの民会立法その他に由来する中央の「ローマ法」によりどの程度、如何なる影響を受けたか、という観点から、これを二次的ルールとの関係で捉え直す同講演は、追って雑誌に翻訳として公表する予定である。
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