研究課題
若手研究(B)
日本の相続法にも大きな影響を与えた古代ローマの法について、往時の遺贈実務を一次史料に基づき分析した。当時の法廷弁論や法学著作を読解し、単著、編著書、雑誌論文にて成果を発表した。社会経済史的観点を法学に導入し、古代の遺贈文化と呼ばれるエリート層の背景事情との関連を解明することが出来た。これにより、欧米学界の到達点を取り込み、最新の知見に基づく実相分析を示した。更に、相続債務の処理も検討に加え、遺贈不履行に備えた担保の意義と機能とを明らかにした。
ローマ法
日本の現行民法にも規定された遺贈に関する担保請求について、立法時には十分に参照されなかった淵源を検討することで、それを必要とした以下の社会背景を析出した。貴族が遺贈を競う文化の下、実際に遺贈が履行されることを担保するため、遺贈対象を提示する義務を課し、不提示に際しては金銭評価して制裁金を支払わせた。また、制裁金は遺贈額に充当され、遺贈義務者である相続人も一定程度保護されたのである。