規制法が現実にどのように実施・執行されているのかは,法が社会にとって望ましい機能を果たしているかを知る上で必要不可欠な視点である.本研究課題は,環境規制法の実施・執行過程について経験的データに基づいた分析とそれを踏まえた理論的分析を行うものである.特に,被規制者(事業者)側の規制法に対する認識はどのようなものか,規制者たる行政との相互作用を通じて,法はどのように実施現場において具体的意味が構築されるのか,法の意味の具体化の展開ダイナミクスと被規制者のそれに与える役割について注目している.これは,法は法対象者にとってどのような存在であり,どのように認識,評価されているのか,すなわち,法が人々の行動にどのように影響を与えているのかを理解するという法社会学一般に関する関心とも呼応するものである.研究初年度である平成28年度では,まず行政側での法の具体化プロセスをまとめ,被規制者側の法の意味構築プロセスの理解の第一歩とした.同時に,何が「遵守」と認識されるのか,その意味構築のプロセスが規制者と被規制者との相互作用を通じて展開されていくダイナミクスに注目しつつ,文献調査を幅広く実施した.本年度の研究実績としては『自治体現場の法適用―あいまいな法はいかに実施されるか』(東京大学出版会)を上梓した.また,国内・国外での学会・研究会での積極的に報告およびUB Berkeleyでの研究打ち合わせを実施し,研究関心を同じくする他研究者との議論を通じて,本研究課題に関して議論を深めた.海外報告として,Annual Meeting of Law & Society Association (New Orleans),ECPR Regulatory & Governance (Tilburg)等,国内学会・研究会として,関西公共政策研究会等での報告を実施した.
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