研究課題/領域番号 |
16K16977
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
久米 一世 中部大学, 経営情報学部, 講師 (60707561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農地中間管理機構 / 持続可能性 / ナショナル・トラスト / 農地法 / 環境法 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成25年12月5日に成立した機構法に基づき創設された「農地中管理機構」(効率的な農地集積・利用を目的とし、農地の貸し手と借り手の間の仲介を行う)について、特に比較法的な観点から検討し、法政策上の提言を行うことを目的として遂行されている。 同機構には希少な担い手にまとまりのある形で農地を利用できるよう配慮し貸し付けるという役割が期待されており、関係者の総力を挙げて農地集積および耕作放棄地解消を推進することを目的としている。日本では同機構の創設以前にも、農用地利用増進事業等の中で、農地の利用権を創出することを通じて賃貸借契約による経営規模拡大のための農地流動化施策を導入してきたが、今回のような全くの第三者機関による管理体制を導入したのは初めてのことである。 平成29年度は比較法的な観点から、イギリスにおけるナショナル・トラストによる農地管理について検討を行った。イギリスでは、ナショナル・トラストが自ら取得した農地を、環境適合的な農業を行う農家に貸し出すことで、持続可能な農地管理を目指している。日本におけるナショナル・トラストの活動領域は主に自然的・文化的景観の保護を目的とするものに限定されているが、美しい田園景観の保全が地域振興に繋がることを思えば、今後日本においてもナショナル・トラストの対象として農地の保全・管理を検討する機運が高まることは十分あり得る。 以上のような問題関心に基づき、今年度はイギリスにおけるナショナル・トラストによる農地管理に関する基礎資料の収集およびその分析を中心に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、農地中間管理機構の今後に示唆を与え得る外国の制度として、イギリスにおける州政府農業制度(州政府が保有する農地を農業への新規参入希望者に対して貸し出す。同制度は、農業階梯の第一段階としてイギリス農業の担い手を育成するものであり、その規模は全農場貸借市場のうち一割を占め、イギリスの農地の利用・管理において重要な位置を占めている)を主たる検討対象としていた。しかし、環境保全的かつ持続可能な農地管理という観点からは、同国におけるナショナル・トラストの取り組みも非常に重要であると思うに至り、そのため平成29年度は特に重要な研究対象として制度分析を行ったため、当初の予定よりも扱う資料の量が増えてしまった。しかし、全体として遅延が出ているわけではなく、統合的に研究は遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成30年度が最終年度であることからも、今後はこれまでの研究成果を論文等の形にまとめ、広く発信することに力点を置きたいと考えている。しかしながら、夏期にはナショナル・トラストに関する現地調査をロンドンで行う予定でもあり、これらの成果については最終年度を越えて今後の研究へと引き継がれていくこととなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が予定より安く購入できたため。また残額の次年度使用計画については、現地調査の費用に加算するものとする。
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