本研究は、平成25年12月5日に成立した機構法に基づき創設された「農地中管理機構」(効率的な農地集積・利用を目的とし、農地の貸し手と借り手の間の仲介を行う)について、特に比較法的な観点から検討し、法政策上の提言を行うことを目的として遂行されている。 同機構には希少な担い手にまとまりのある形で農地を利用できるよう配慮し貸し付けるという役割が期待されており、関係者の総力を挙げて農地集積および耕作放棄地解消を推進することを目的としている。日本では同機構の創設以前にも、農用地利用増進事業等の中で、農地の利用権を創出することを通じて賃貸借契約による経営規模拡大のための農地流動化施策を導入してきたが、今回のような全くの第三者機関による管理体制を導入したのは初めてのことである。 平成30年度は比較法的な観点から、イギリスにおける農業アドバイザーが果たす農地管理上の機能について検討を行った。イギリスでは、19世紀に至るまでエステイト・スチュワードが地主の名代として農地経営を差配した歴史があり、彼らは先進的な農業技術を普及させると同時に、地主と借地人を仲介する存在として機能した。 近年、農地管理に要する知識や技術は専門性を増しており、経営の多角化や政府の補助事業への申請に際してはアドバイザーの助力が不可欠なものとされている。法文上は現れてこない、第三者としての仲介者の存在が、かつての完全に私的なものから公的な法政策の策定に際し予定されたものとなる経緯を明らかにし、エステイト・スチュワードの系譜を引き継ぐ現在の農業アドバイザーたちの現代的位置付けについて、文献研究を中心に行った。仲介者としての彼らの機能は、機構の将来像を展望するにあたり示唆に富むものと考える。
|