研究課題/領域番号 |
16K16979
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, 人文科学部門, 准教授 (10564966)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行刑史 / 監獄制度史 / 監獄学 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本に監獄学(刑事政策学)が持ち込まれ、法学の一分野として確立してゆく過程(1890~1940年代)を考察対象とし、日本の行刑における独自性がどのように生成・認識・評価されたのか、またそこにはいかなる背景があったのかを明らかにする。 上掲の目的を達成するため、本年度は、明治期に唱えられた日本の監獄改良論がいかなる人脈や思想に影響を受けていたのかを捉えようと試みた。その工程として、5月には法制史学会第447回近畿部会で「明治日本の「監獄学」―その系統と論点の把握に向けて」と題する研究報告を、10月には法制史学会東京部会第268回で「「監獄学」成立期の人的な繋がりと思想的基盤について」と題する研究報告を行った。両報告は大まかな研究構想の発表にとどまるもので、質疑において厳しい指摘を受けたが、頂戴したコメントを踏まえた上で、論文を執筆・投稿した。当該論文は、2018年中に発表される見込みである。 なお、本研究では今後、大正・昭和戦前期の監獄法改正作業についても考察を行う予定であるが、その前提として矯正図書館・矯正資料館等で資料の閲覧・収集作業を行った。とりわけ、矯正研修所が府中市から昭島市へ移転する直前に、同所に設置された矯正資料館の所蔵資料を確認する機会を得、その内容を『刑政』128巻10号において「矯正資料館のあゆみとその所蔵資料」と題する小文にまとめている。本稿は、これまで十分に明らかにされてはこなかった矯正資料館の歴史や同所の所蔵史料に触れたもので、史料の来歴や所在情報を明らかにした点で、一定の意義を持つものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の本欄では、「1.当初の計画以上に進展している」との自己評価を行っており、本来であれば今年度は、最終年度に予定されていた「監獄学に関わった学者・司法省官僚らの学問的系譜・人脈・社会認識」について考察を進める予定であった。 しかし、その入り口にあたる監獄学生成期(明治前~中期)の考察を行うにあたって、分析視角の設定や論点の抽出に手間取り、当初予定していた1890年代~1940年代の考察には踏み入れないままに一年間が過ぎ去ってしまった。いわば、初年度に「計画以上に進展」した部分を、2年目で食い潰し、当初のスケジュール通りの進展に収まっている状況である。 ただし、次の段階(明治後期から昭和戦前期の監獄法改正作業に関する考察)で用いる史料の所在は一定程度把握できているため、次年度は、目指す研究に手早く取りかかることができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、大正期から昭和戦前期にかけての監獄法改正作業およびその関係者について、資料の収集と分析を進める予定である。 特に、法務省や矯正図書館の所蔵史料を用いて、大正から昭和戦前期にかけての監獄法改正作業を概観するとともに、特色ある論点―後年、日本の独自性として指摘される部分―を取り上げ、条文の生成過程や背景にある理念などについて考察を加えたい。 この点については、2018年年度中に研究会の場で成果を報告するとともに、2018年度以降、考察対象となる時期を区切った上で、2本程度の論文に分割して公表したいと考えている。
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