研究課題/領域番号 |
16K16979
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 行刑史 / 監獄制度史 / 監獄学 / 大日本監獄協会 / 監獄則 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本に監獄学(刑事政策学)が持ち込まれ、法学の一分野として確立してゆく過程(1890~1940年代)を考察対象とし、日本の行刑における独自性がどのように生成・認識・評価されたのか、またそこにいかなる背景があったのかを明らかにする。 かかる目的を達成するため、本年度は、昨年度までに収集した史料、学会等で行った研究報告を元に、3点の論文を発表した。1点は、高塩博編『刑罰をめぐる法文化』(国際書院、2018年10月)に収められる「1880年代における監獄改良論者の人脈と思想的基盤について」(67-97頁)である。本論文は、1880年代の監獄改良論(監獄学の前史)や、同時代に設立された大日本監獄協会の人脈や思想的基盤を論じたものである。なお、大日本監獄協会については、『刑政』129巻11号(2018年11月)に寄せた「大日本監獄協会創設期の人脈とその関心」(60-69頁)も合わせて参照のこと。 残る1点は、「明治20(1887)年の「監獄則改正草案」―その編纂過程を中心に―」(『法史学研究会会報』22号、2019年3月、123-133頁)である。同論文では、明治20年の「監獄則改正草案」を取り上げ、その内容・編纂過程・関係者について論じた。 以上、本年度は主に1880年代の監獄を取り巻く状況について成果を公表したが、結論として、同時期の監獄制度・監獄改良論に、必ずしも従来指摘されていたようなドイツへの傾斜を見てとることはできないこと、とりわけ実務・制度のうえでは、舶来の学説を受容・解釈しながらも、従来の制度からの連続性を強く見てとることができることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の本欄では、「2.おおむね順調に進展している」との自己評価を行ったが、今年度は、これまでに収集した史料や、これに基づいて判明した内容を活字化することに終始し、新たな課題に取り組むことができなかった。 というのも、本年度は、本務校で2つのセクションの責任者に任じられたほか、事情を抱えた他教員の業務を急遽代行するなど、本研究の申請当初に想定していなかった膨大な校務が発生し、史料調査に割く時間をほとんど確保できなかったためである。そのため、やむを得ず補助事業期間の延長を申請するに至った。 次年度も、研究環境が好転する兆しは見えていないが、本研究に関係するいくつかの論文の投稿期限を迎えるため、なんとか時間を作り出して、史料の調査・論文の執筆にあてねばならないと考えている。残された課題である、明治後期から昭和戦前期にかけての監獄や、監獄法改正作業をテーマに、一定の成果を得たい。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の延長申請によって計画を一年間延長した次年度は、当初本年度に計画していた事柄、すなわち明治後期から昭和戦前期にかけての監獄学、および監獄法改正作業とその関係者を対象として、史料の収集と分析を進めたい。 監獄学をめぐっては、明治30年代に設立された「警察監獄学校」の関係資料を手にしているため、同学校の設立経緯(目的)やその教育内容・課題について、考察を加えたいと考えている。 また、大正から昭和戦前期の監獄法改正作業をめぐっては、作業の効率化および研究の着実な進展を期すため、当該期の行刑制度改革にあたった山岡萬之助や正木亮の関係文書を用い、一つのテーマ(刑事政策学上の論点)に絞って、その議論の様子や論者の立ち位置を検証してみたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本務校で2つのセクションの責任者に任じられたほか、事情を抱えた他教員の業務を急遽代行するなど、本研究の申請当初に想定していなかった膨大な校務が発生し、そのために申請時に予定していたエフォートを研究に割くことができなかった。結果として、当初予定していた出張(史料調査)・研究会報告の多くを断念せざるを得ず、本研究の進展が遅延したものである。 次年度の助成金使用計画としては、当初、2018年度に予定していた出張(史料調査)・研究会報告のための「旅費」に加え、関係する図書等の購入に用いる「物品費」、必要が生じた場合に史料の撮影・データ化を行うための「その他」経費などを想定している。
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