研究課題
若手研究(B)
主として非人道的な取扱いなどを禁じたヨーロッパ人権条約3条に着目して、仮釈放の可能性を認めない無期刑や刑事施設内の処遇環境に関するヨーロッパ人権裁判所の判例法理の展開や理論動向を分析し、受刑者の権利保障に資する判断枠組みのあり方を考察した。加えて、受刑者処遇法の領域で国際人権法規範を参照する意義について、日英の実情を踏まえて検討した。
公法学
第1に、仮釈放の可能性を著しく制限した無期刑は自由刑の主要目的である社会復帰処遇の放棄に等しいことや、再犯可能性の評価は将来の予測を前提になされる点で、無期刑受刑者の仮釈放審査は社会復帰処遇の展開が見込まれうる一定年限経過後に定期的に行う必要があることを示した。第2に、拷問の禁止などの絶対的保障が及ぶ人権規定を根拠として刑事施設内の処遇環境に関する最低基準を定立することは、被収容者の人権保障にとって一定の意義があることを示した。