本研究を通じ、17世紀初頭のレモンストラント論争で展開された国家・教会関係論が、同世紀中葉、英国の内戦の影響で改革派教会との軋轢が再燃する中、国内におけるホッブズ受容と合流しつつ再復活したこと、また、この文脈の中で、スピノザの聖書解釈が、ホッブズとの比較においてのみならず、上記論争の遺産を含めた、複線的な発展の産物として解釈し得ることが示された。同様にフベルスの国家・教会論についても、こうした宗教的・政治的磁場の中での立ち位置がより明確にされた。これらを通じ、国家論の世俗化及び人権の成立というヒストリオグラフィ上の論点について、背景史実考証とテクスト読解を組み合わせるアプローチが提示された。
|