研究課題/領域番号 |
16K16985
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片桐 直人 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (40452312)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 財政法 / 憲法 / 貨幣 / 金融 / 中央銀行 / 通貨法 |
研究実績の概要 |
本研究では、貨幣を基礎とした財政憲法の理論的・制度的考察を目指している。本年度の研究においては、(1)貨幣と法ないし憲法との関係、(2)金融と法の関係、(3)財政と金融の関係の法的分析を進めた。 まず、(1)について、研究代表者が構想する財政通貨秩序を包摂する憲法構造の核となる貨幣概念について、とくにその機能面に注目して法学的拡張を試みた。また、ビットコインを代表とする新しい通貨の登場の憲法学的考察について検討した。これらの成果は、すでに論文として公表されている。 つぎに、(2)について、国際通貨金融法の構造について分析を進め、その成果は、研究会で憲法学・国際法学の研究者が集まる研究会にて報告をした(2016年12月)。また、2017年3月に客員研究員として大阪大学に滞在したアン・カトリン・カウフホールド教授(ミュンヘン大学)とマクロ・プルーデンス規制の公法学的側面について意見交換を行った。これらの研究を通じて、金融の公法的な課題について検討を深めることができた。 最後に、(3)について、ドイツ連邦憲法裁判所のOMT合憲判決を素材にして、金融政策と財政政策の境界のあり方とその法的統制について検討を加え、2016年12月のドイツ憲法判例研究会にて報告をした。その成果は、2017年度中に公表される予定である。 以上を通じて、貨幣と財政との関係を考察することができただけでなく、金融と財政との関係、財政政策と通貨政策との関係を法学的に検討することができ、成果の学会及び社会への発信も十分にできたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、(1)貨幣概念の分析を進めること、(2)ドイツの財政法の基礎資料を収集することが柱とされていたが、どちらも順調に進み、(1)については論文として成果を公表することができた。 それに加えて、本年度においては、当初予定していなかった、金融や通貨政策との関係についても考察を深めることができ、研究会での報告や論文の公表にもつながっている。以上のことから、当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、ドイツの財政法学の関連理論に関する研究を進める。この間に得た知見に関する理解を深めるため、ドイツに渡航をして、専門的知見の提供を受けるとともに、資料収集を行う。さらに国庫の資金繰りがどのような要因に規定されているかについても検討する。
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