研究課題/領域番号 |
16K16988
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西上 治 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (70609130)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行政法 / 機関訴訟 |
研究実績の概要 |
今年度の主たる実績は、次の3点にこれをまとめることができる。 第1に、ドイツ・フライブルク大学における日独法学シンポジウムにおいて、本研究の仮説について報告し、本研究が比較法の主たる対象国とするドイツの法学者と広く議論をする機会を得た。そこでは、わが国の公法学における伝統的な司法権理解の問題点を示し、その革新の方向性を示した。本シンポジウムの成果は、日本語・ドイツ語の双方で近いうちに公表される。この仮説を具体的に検証することは、次年度以降の課題である。 第2に、本研究の途中経過について、いくつかの論文を執筆した。その中では、19世紀から20世紀初頭までのドイツにおける権利論に関する古典的な文献を読み直すとともに、行政訴訟の原告適格を画する機能的な概念として権利概念を理解しようとする近年のドイツにおける有力説を検討した。もっとも、ごく簡単な描写に留まっている。本格的な検討は次年度の課題である。また、いわゆる杉並区住基ネット判決(東京地判平成18年3月24日判時1938号37頁、東京高判平成19年11月29日判例地方自治299号41頁)を素材として、わが国の公法学における伝統的な「法律上の争訟」理解の問題点を示し、その革新の方向性を示した。いずれも近刊予定である。 第3に、以上に関連して、国内におけるいくつかの研究会(北陸公法判例研究会、関西若手公法研究会等)で報告し、様々な分野の法学研究者と議論をする機会を得た。その成果は、上記の各論文において反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公表に至っているものはないが、複数の論文は既に校正段階にあり、近刊予定である。また、今年度に研究する予定であったものの一部(20世紀半ばから今世紀にかけて、判例・学説における行政訴訟の原告適格論において、個別的利益の要素が如何なる機能を果たしてきたのか)を扱うことはできなかったが、その分、次年度に扱う予定であったものの一部(権利概念の機能的理解の可能性)を扱うことができた。そのため、全体としてはおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、今後も引き続き研究計画に沿って研究を進めていく。幸いにも、2017年9月からドイツ・フライブルクにおいて在外研究をする機会を得た。本研究は、ドイツを比較法の主たる対象国とすることから、このことにより、本研究はいっそう順調に推進され得ると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の段階では、ドイツへの文献調査についても本基金から支出する予定であったが、別の財団から助成を受けることができた。そのため、その分の使用額が減っている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、そのぶん多くの文献を購入し、分析の対象とする予定である。
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