研究実績の概要 |
本研究は、(ア)権利概念における個別的利益の相対性、(イ)権利概念の機能的理解の可能性、(ウ)諸種の憲法原理による方向づけ、以上3点を示すことを目的としている。今年度の主たる実績は、次の4点にこれをまとめることができる。 第1に、機関訴訟に関する単著『機関争訟と「法律上の争訟」性』(有斐閣、2017)を公刊した。その中で、ドイツ・日本における近年の議論状況を分析し、権利概念における個別的利益の相対性及び権利概念の機能的理解の可能性について論じた(ア、イ)。 第2に、「行政事件の再定位?――杉並区住基ネット訴訟を巡って」法律時報89巻6号35頁以下(2017)を公表した。その中で、日本の最高裁判決等を分析し、伝統的な「法律上の争訟」理解の問題点を示した。そこから、権利概念の機能的理解の可能性を導き、諸種の憲法原理による方向づけの一要素として、法的紛争解決手続と通常の政治過程とを権力分立原理から整序する方向性を示した(イ、ウ)。 第3に、Zur Klagebefugnis beim Verwaltungsprozess in Japan, in: Tradition und Innovation im Recht, hg. von A. Bruns, 2017, S. 213-222を公表した。その中で、日本の伝統的な司法権理解の問題点を示し、ドイツの近年の学説を分析することで、その革新の方向性を示した(ア、イ)。本論文の日本語版も近刊予定である。 第4に、以上の研究成果を受けて、ドイツ・フライブルクにおいて、特にア・イに関する近年のドイツの文献の分析を続けている。
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