本研究は、(ア)権利概念における個別的利益の相対性、(イ)権利概念の機能的理解の可能性、(ウ)諸種の憲法原理による方向づけ、以上3点を示すことを目的としている。今年度の主たる実績は、次の3点にこれをまとめることができる。 第1に、「『法律上の利益』と公権論―「個人の法的地位」の観点から(1)(2・完)」と題する論文を執筆した。(1)は民商法雑誌154巻6号1163頁に公表され、(2・完)は同155巻2号にて公表される予定である。これは、ドイツ公権論を素材として、権利概念における個別的利益の相対性および権利概念の機能的理解の可能性を示すものである(ア、イ)。 第2に、2019年3月にドイツ・コンスタンツ大学で開催されたシンポジウム「行政法のさらなる発展」において、「Intra- und Interadministrative Rechtsstreitigkeiten」と題する報告を行った。ドイツの雑誌においても公表する予定である。これは、ドイツにおける機関訴訟に係る立法例・判例を可能な限り網羅的に調査することによって、機関訴訟の出訴資格を諸種の憲法原理によって方向づける際に参照されるべき具体的な素材を提供するものである(ウ)。 第3に、「データ保護法上の監督機関の独立性と民主的正統性」と題する論文を執筆した。法律時報91巻7号にて公表される予定である。この中で、ドイツにおけるデータ保護法上の監督機関の出訴資格を扱っている。これも、機関訴訟の出訴資格を諸種の憲法原理によって方向づける際に参照されるべき具体的な素材を提供するものである。 以上によって、(ア)(イ)については当初の予定を達成することができ、(ウ)についても豊富な材料を提供することができた。
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