平成30年度は、前々年度に行った理論研究と、前年度に着手し始めた具体的法領域における理論の展開に関する研究とを総合し、学説の全体像のより正確な把握に努めた。前半は、行政による法の適用を動態的・創造的に把握しようとする諸説をそれぞれどのように理解し、整理するかについて構想を固め、関連する研究を行う研究者へのヒアリングを行った。後半からドイツにおいて在外研究を行う機会を得たため、現地の研究会への参加、および研究者へのインタビュー調査の実施等を通じて、ドイツ法の最新の状況を知ることに努めた。また、これまでの研究成果のうち日独比較の分析に関する部分について、ドイツの学会および雑誌において成果を公表する機会を得られたため、そのための準備を進めた。特筆すべき研究実績は、以下のとおりである。 第1に、平成31年3月に行政による法の適用の動態的・創造的理論の観点から重要なモノグラフィーを出版したドイツの研究者に、インタビュー調査を行った。法の適用を動態的・創造的に把握しようとする諸説をそれぞれどのように評価すべきかについて、議論を交わすことができた。 第2に、平成31年5月にアウグスブルクで開催される日本法のシンポジウムにおいて、研究報告を行うことになった。報告では、行政裁量に関する日本の判例を素材に日独の裁量論の異同を扱う予定であり、そのための準備を進めた。報告原稿は、後にドイツの雑誌において公表される予定である。
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