本研究は、いわゆるChevron判決(1984年)を主たる研究素材とし、行政機関による「法解釈」(以下、「行政解釈」という)に裁量(対司法裁量)が認められる余地があるかを究明するものである。 Chevron判決を巡り、本研究では、①1984年以前における、米国での行政解釈に対する司法審査姿勢について、②Chevron判決によって示された法理の性質理解と敬譲型審査の根拠論について、③Chevron判決の有する二段階(twp-steps)型審査の構造分析について、④審査手法・審査密度について、⑤Chevron法理の適用範囲について、整理を試み、①、②の点については成果(海道俊明「行政機関による制定法解釈とChevron法理(一)」神戸法学雑誌66巻3・4号65-118頁)を公表済みである。すなわち、1984年以前の米国においては、行政解釈の対する司法審査に定型的な法則は見出しがたく(ケースバイケースアプローチ)、それがChevron判決によって、一定程度法則性が示されたこと、敬譲型審査の根拠が、立法者意図又は裁判所自身の司法消極的な自制にその根拠を見出せることを明らかにした。 また、視点を我が国に向け、日本の行政解釈に対する司法審査についても、法律の授権を受けて制定される法規命令によって示される行政解釈と、そういった授権のない行政規則(とりわけ、裁量基準や解釈基準といった規範)によって示される行政解釈の違いに目を向け、それぞれに対する我が国の裁判所による審査姿勢につき考察を加え、2017年3月に行われた関西行政法研究会において、研究報告を行っている。
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