研究課題/領域番号 |
16K16993
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
ウミリデノブ アリシェル 名古屋大学, 高等研究院(法学), 特任助教 (10774599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 投資協定 / 投資仲裁 / 租税問題 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績の概要は次の通りである。 1)比較租税法における国家租税裁量権についての研究の深化に取り組み、日本における法制、判例、学説を調査・分析を行い、本研究にとって有益な示唆を得た。2)租税に関して、Oxus Gold v. Uzbekistanなどの重要な仲裁判断が公開されたことをきっかけに、ホスト国のウズベキスタンで現地調査を行い、国の規制権限と外国投資の保護の状況を租税優遇措置の観点から検討した。その結果に基づき、論文「ウズベキスタンにおける投資仲裁~天然資源投資を伴う課税問題を素材に~」『講座 アジアの法整備支援』を執筆した(2017年に出版予定)。3)投資仲裁判決だけではなく、急激に発展している投資協定上のルール・メキングについて検討し、カナダとEUの間に新しい自由貿易協定モデルとして結ばれた包括的経済貿易協定(CETA)は、租税に関して投資仲裁の裁量を大幅に縮小し、当事国租税機関に大きな権限を与えていることを明らかにした。その結果については、ドイツのフライブルグ大学で行われた国際シンポジアムで報告を行った。4)イギリスのロンドンに渡航し、西ロンドン大学Yaraslau Kryvoi 教授、また、リバプール大学のMavluda Sattorova 教授等現地研究者と本研究に関して議論し、投資協定に基づく投資仲裁と同様の超国家制度として、WTO 及びEU 法との比較研究が投資協定に基づいて行われる租税問題に対して重要な手がかりとなることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、国内法の検討、租税問題に関する仲裁判断と投資協定上のルール・メキングを検討しつつ、イギリスやドイツ渡航の際に租税に関する国際的義務と国内政策とのバランスという問題に関して研究の発展に向けて重要な手がかりを得ることができた。また、研究の進展により、社会科学分野で知られている国際的な出版社であるRoutledge社と出版契約書を結ぶことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては,研究の推進方策は,以下の通りである。1)本研究の一部の成果をアムステルダム市に本拠を置くIBFD租税法研究所での若手研究者フォーラムで報告し、国際法学者だけではなく、国際租税法学者とも議論をする。また、当該機関の豊富な図書室から資料を収集する。2)visiting scholars 制度を活用して、ハイデルベルク市にあるMax Planck Institute for Comparative Public Law and International Law とオーストリアのInstitute for Austrian and International Tax Lawを短期訪問し、欧州における租税に関する個人の権利保護と租税政策との対立に関する議論を分析する。3)時間を有効に利用するために、またRoutledge社との契約通りに原稿を提出できるように、すでに出来上がっている部分について早めに英語で執筆を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定したドイツのMax Planck Instituteへの海外研修を実施しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に当初平成28年度予定していたドイツへの海外研修を実施する予定である。その際、剰余金を使用する。
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