本研究は、紛争処理手続という観点から外国投資に関する法制度について検討する研究である。その紛争処理手続は、法的根拠、フォーラム等が多層的に併存する状況にある。投資受入国の実質的に同一の措置等に対して、手続が並行して提起される場合があり、手続の競合状態になる。これらの問題点を事例および法(条約)規定の分析から明らかにするものである。 本研究では、投資条約の投資家=国家間紛争処理(ISDS)条項を根拠とする仲裁手続(投資条約仲裁手続)に付託された事例について公開されている資料を分析し、実質的に同一の主題について別の手続も提起されている事例を抽出して、(1)当事者、(2)手続の根拠、(3)手続のフォーラム、(4)手続の時系列を基準として整理して分類を行った。とくに、2010年以降に判断が公開された事例について、そのなかで言及されているケースの分析からリーディングケースに位置づけられる事例を分析している。 それらとともに、投資条約仲裁手続と並行して提起された手続について、(1)単一の国家の行為に対する同一の投資家による複数の手続(投資条約仲裁、投資契約仲裁、国内裁判など)、単一の国家の行為に対する複数の投資家による複数の手続(大元の出資者と子会社、複数の投資家による共同出資による投資など)のパターンに分けた検討を進めた。 2018年度終了時点までに整理分析を完了できた資料をもとに、国際私法学会第132回大会(2019年6月)において「投資紛争における並行的手続」と題する研究報告を実施した。この研究報告をもとに論文を執筆している。
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