本研究は係争海域における国家の権利義務の内実と外延を、理論的、かつ、実証的に検討することを目的とする。とりわけ、係争海域において、係争当事国が一方的に海洋利用を行う場合に、いかなる制約が国際法上当該国に課せられるのかを中心に研究を行う。本研究は従来の海洋法理論の限界を踏まえた上で、これまでの実証研究で十分に解明されてこなかった、途上国間における係争海域紛争の精緻な事例研究を行うことによって、国連海洋法条約体制についての新たな展望のための基礎を提供することを狙いとしている。 本年度は、この問題関心に基づいて、海洋安全保障と海洋法の関係について、多面的な検討を行うことができた。公刊には至っていないが、2017年9月23日の国際海洋法裁判所による、ガーナ対コートジボワール境界画定事件において、本研究の主題に関わる判示がなされたので、その部分の検討をも独自に進めることができた。 また、インドで開催されたUNCLOS: Solutions for managing the Maritime Global Commons(India Foundation主催)や、マレーシアで開催されたJapan-Malaysia Maritime Cooperation: Shaping Security Cooperation in the Indo-Pacific (Maritime Institute of Malaysiaと日本国際問題研究所共催)などの国際会議において、本研究の成果の一部を発表することができ、欧米以外の国の研究者と充実した意見交換を行うことができた。
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