研究課題/領域番号 |
16K17000
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
成田 史子 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (90634717)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 労働法 / 企業組織再編 / 事業譲渡 / 会社分割 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である、企業組織再編手続における労働者保護規範の解釈論・立法論を提案するために、2017年度は以下の研究実績をあげた。 すなわち、研究実施計画に掲げているとおり、比較法的見地の獲得を目指して、EU及びドイツの企業組織再編における労働者保護規範の構造を分析した。ドイツでは、①事業譲渡時の労働契約の承継に関して、労働契約の自動承継及び一年間の労働条件の不利益変更・解雇が禁止されている(民法典613a条)。一見すると、労働者に対して事業譲渡を理由とする何らの不利益も生じない制度設計になっている点が注目される。日本法とは大きく異なる制度である。次に、②日本と同様に権利義務一般の承継を(部分的)包括承継としている会社分割についても、会社法分野である組織再編法のなかに、事業譲渡の場合と同様の労働者保護に関する実体規制が設けられている点が特徴である。 一見すると労働者保護と企業再編実施の調整がうまく図られているような制度であるが、ドイツでもこのような法規制がうまく機能しているわけではなく、EUの企業譲渡指令の国内法化を果たしているかどうか、また、労働者を過度に保護する法規制は、企業組織再編の柔軟な実施の妨げになるのではないか、などの多くの議論や争いが存在する。このように、複雑に絡み合ったドイツの企業組織再編時の労働法規制を、EUの企業譲渡指令の制度と比較考察しつつ、立法資料や学説の議論及び判例等を参考に、その制度の特徴や問題点を明らかにすることを試みた。 上記研究を行うためには、所属機関には所蔵されていないドイツ語文献を収集する必要があった。そのため、日本国内でも随一の所蔵を誇る東京大学付属図書館へ数回赴き、必要な資料の収集、検討に研究の大部分を費やした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は、ドイツへ赴き資料収集や聞き取り調査を行う予定であった。 しかしながら、本研究課題のためのドイツ出張は他の研究出張との兼ね合いから2017年度中は叶わなかった。日本国内で収集した資料の検討はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度・2017年度は収集した邦語文献およびドイツ語文献の検討を中心に行った。 2018年度は本研究課題の最終年度であるため、ドイツへ赴き、聞き取り調査などを行って、研究をより進化させる。そして、本研究の目的である、企業組織再編手続における労働者保護規範の解釈論・立法論の提案を試みる。
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