本研究の第一の目的は、2016年4月から施行された障害者雇用促進法の合理的配慮規定について研究することである。この合理的配慮概念は、アメリカが1990年に制定した障害をもつアメリカ人法(ADA)の中で本格的に導入したものである。日本では導入されたばかりの合理的配慮規定について、既に長年の経験を有するアメリカでの理論および実態を研究することは、本研究にとって非常に重要である。最終年度である2019年度は、研究代表者がアメリカでの在外研究中であったため、アメリカにおける障害者雇用についての研究を中心に進めた。 研究代表者が所属していたハワイ大学(University of Hawaii)には、雇用差別禁止法について多くの業績をもつ教授や、障害者雇用を研究する教授がおられ、それらの教授の講義を受講したり、雇用差別や障害者雇用についての議論を行った。また、同大学には、障害(者)研究を行うセンター(Center on Disability Studies)があり、同センターの研究員へのヒアリングを行ったり、同センターが開催する障害者雇用に関する各種のイベント(例えば、障害のある学生と企業との就職セミナー等)に参加し、アメリカにおける障害者雇用の実態を調査した。さらに、ハワイでは毎年、障害者問題の研究者や実務家が集まるシンポジウムが開催されており、それに出席して、各国の研究者らと意見交換を行った。このような調査・研究を通して、合理的配慮概念がアメリカ社会において広く浸透していることや、法律だけではない民間企業における独自の取り組みを把握することができた。 加えて、ハワイ大学において、日本の障害者雇用についての報告をする機会があり、ハワイ大学の教授や学生らとの意見交換を行うことで、日本における障害者雇用のあり方についての理解を広めることができた。
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