研究課題/領域番号 |
16K17002
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
土岐 将仁 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60707496)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 使用者 / 名宛人 / 規制の実効性 / 親会社・注文者 |
研究実績の概要 |
本研究は,企業のグループ化・アウトソース等の経営手法の進展により,労働契約上の使用者が第三者の間接的な影響を受けることで,労働契約上の使用者を名宛人とする規制では実効性を確保できない事態が生じうることを背景に,労働契約当事者以外の者が規制にどのように関与すべきかを検討するものである。 本年度は,ドイツ及び昨年度に一部先行して行ったアメリカについて,次のような作業を行った。すなわち,パッチワーク的に存在する労働契約当事者(使用者)以外(管理職・上司等の会社内部の者を除く)の者を直接の名宛人とする規定について分析を加えるとともに,「使用者」を名宛人としつつも,解釈論によって労働契約当事者としての使用者以外の者が名宛人とされるのはいかなる場合かを検討した。 この結果,次のような知見が得られた。ドイツでは,「使用者」を労働契約当事者と理解した上で,解釈論によって労働契約当事者以外の者に義務や責任を課すことについては,比較的慎重な態度が取られ,必要な場合に個別的に立法による対応がなされているということである。これに対して,アメリカでは,「使用者」は必ずしも労働契約当事者に限られず,解釈によって導かれている諸法理によって労働契約当事者以外の者を「使用者」に含めて名宛人としているということである。また,第三者を名宛人とする理由という点に着目すると,公法上の規制を補充するために,労働契約当事者以外の者に私法上の責任を課すという場合が,両国で見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の主たる目的は,比較法分析の対象としたドイツ・アメリカの状況を把握することであったが,やや遅延している。年度中途で所属大学を移籍したが,その準備・移籍後の立ち上げに,思いのほか時間を要したためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,やや遅延しているアメリカやドイツにおける労働契約当事者以外の者が名宛人とする場合についての検討を深めるとともに,日本法上の議論の展開のフォローに努める。その上で,初年度に設定した暫定的な分析軸に修正を加えながら,本研究の取り纏めを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の中途で所属大学を移籍し,その準備・移籍後の立ち上げに,時間を要したため,予定よりも研究が遅延し,未使用が生じた。購入できなかった図書等の購入に充てる。
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