研究課題
若手研究(B)
被害者(法益主体)の同意による犯罪構成要件ないし違法性の阻却には,被害者の真意に基づく同意が要求されるが,被害者の事実上・実際上の意思に反する行為であっても同意の効力が認められる場合があり,その意味で同意は規範的に把握される必要がある。本研究ではとりわけ錯誤に基づく同意の有効性について検討し,同意は特定の行為者との関係でのコミュニケーション行為であるとの理解のもと,被害者の意思内容だけでなく,錯誤が行為者の欺罔により惹起されたという行為者側の事情が重要な意味を有することを確認した。
刑法
被害者の同意の有効性を判断するに当たり,被害者の意思内容だけでなく,行為者側の事情をも考慮すべきとの点は,これまでの議論において十分に意識されてきたとはいえず,本研究の成果には一定の学術的意義がある。偽装心中の事案など,同意の有効性が裁判例において問われることもあり,社会的意義も認められると考えられる。