本研究においては、イギリス法及び欧州人権裁判所の判例法を手掛かりに、以下の点を明らかにした。黙秘権保障の実効性を確保するためには、供述するか否かに関する被疑者の主体的な意思決定・自己決定が保障されていなければならない。このような意思決定・自己決定の前提として、被疑者には、取調べに先立って、(1)一定の証拠(情報)開示を受ける機会、及び、(2)弁護人と秘密裏に接見する権利が保障されなければならない。その上で、取調べ過程において、被疑者の主体的な意思決定・自己決定が不当に侵害されることがないよう、被疑者には、取調べに弁護人を立ち会わせ、実効的に関与させる権利が併せて保障されなければならない。
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