研究課題/領域番号 |
16K17015
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
酒巻 修也 青山学院大学, 法学部, 准教授 (80756338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 一部無効 / 濫用法理 / 競業避止特約 / フランス法 / 条項規制 |
研究実績の概要 |
当該年度では、フランス法における競業避止特約の規制のあり方について、一部無効による解決と濫用法理による解決の違いを分析した。 この分析の結果、競業避止特約の規制にあたっては、一部無効と、濫用法理のいずれも問題となり、両者の違いを次のように考えることができた。 競業避止特約の規制につき、少なくともその一部の事案では、当該条項の合法性が問題となっていると考えられた。つまり、競業避止特約の期間等があまりに過剰である場合には、債務者の労働の自由等を過度に侵害しており、それを合法なものと評価することはできない。そこで、一方で、債務者の労働の自由等を侵害せずに、他方で、債権者側の利益を維持するために、つまり、違反された合法性の回復という観点から、当該条項のうち過剰な部分のみの無効が課されることになる。 それに対して、競業避止特約の規制にあたり、被用者の職務や実際に債権者に損害が生じているか否かといった契約成立後の事情が考慮される場合、当該条項の合法性の問題として一部無効による解決をするのではなく、当該条項それ自体は合法であり、しかしその濫用的な援用態様が問題であるとしてその援用を当該事案において否定するという解決をすべきであると考えられた。なぜなら、不法な契約条項の無効の問題であるとするならば、次のような不都合が生ずる可能性がある。たとえば、雇用者が多様な事業を行っていて、その一事業の活動をやめた場合に、雇用者が、当該事業で働いていた被用者に対して、競業避止特約を援用したとする。このとき、当該条項の合法性の問題として、かつての雇用者に対する実際の侵害が生じていないために不法だとして当該条項を無効にするならば、そのあとで、当該被用者がかつての雇用者と同種の仕事をすることが可能となるという問題が生ずる。 このようにして、一部無効と濫用法理による規制とが段階的に用いられていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属先の変更等に伴いエフォートの配分がそれまでのものと変わったため、成果の一部がまだ公表できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究課題に関する最新の議論状況に注意を払いながら、これまでの研究成果の公表作業に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の業務によりフランスでの調査ができなかった。フランスでの最新の議論状況を把握するためにも、主にフランスでの調査のための旅費に使用する予定である。
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